9月入学で保育園や幼稚園にどんな影響があるの?入園時期は?待機児童問題はどうなる?

新型コロナウィルスの感染拡大による一斉休校から、学習の遅れ等を懸念して浮上した「9月入学」案。入学式も開かれていない学校も多く、9月から仕切り直したいという要望もありました。

海外で多い9月入学については30年以上前から議論されてきた案です。ただ、日本では明治以降4月入学を基盤に社会全体が築き上げられてきているため、非常に課題が多く見送られてきました。

今回の移行案に関しても、賛否が大きく分かれています。新1年生にあたる子どもたちだけでなく、入学を控えた幼稚園・保育園の子どもたちにとっても影響が及ぶからです。

そこで今回は、9月入学で保育園や幼稚園にはどんな影響があるのか、いくつかの移行案を例にとりながらご紹介いたします。

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9月入学で保育園や幼稚園への影響はどうなる?

今回の議論で行われた移行案は大きく分けて2つです。

9月入学の移行案
①一度に移行する
例)2021年入学の場合
2014年4月2日から2015年9月1日生まれまで(17か月間)
②段階的に移行する
例)2021年入学から5年かけて移行する場合
2014年4月2日から2015年5月1日生まれまで(13か月間)
2015年5月2日から2016年6月1日生まれまで(13か月間)
2016年6月2日から2017年7月1日生まれまで(13か月間)
2017年7月2日から2018年8月1日生まれまで(13か月間)
2018年8月2日から2019年9月1日生まれまで(13か月間)

①の場合は、現制度の4月2日~翌年4月1日生まれの子に加えて、4月2日~9月1日生まれの子も同時に入学とし、1年で移行を済ませます。よって、例年の1.5倍1学年人数が増加することになります。

教室や座席、教員などの確保を迫られ、現場の負担は相当増えます。これを軽減するために考えられたのが、対象の範囲を17か月から13か月に短縮して、5年かけて行う段階的移行案です。

①の場合だと、年長児と年中児の一部が一緒に入学することになり、年中児の子どもたちにとっては年長で過ごす期間がほとんどないまま卒園となってしまいます。

9月2日以降誕生日の子と学年が分かれてしまうことにもなり、そのような不公平感を減らすために、学年の区切りは変えずに入学時期だけを9月にずらそうという案もあります。

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保育園の入所開始時期や幼稚園入園への影響は?

9月入学で影響が出るのは、卒園・入学のタイミングだけではありません。入園時期にも影響が出る可能性もあります。

保育所の退所が3月から8月に5ヶ月後ろ倒しとなれば、定員オーバーになる可能性が大きい。

幼稚園の場合、定員の基準は教員1人あたりの児童数ですが、保育所の場合は人数だけではなく広さの基準もあります。保育室の広さに応じて決まっており、簡単には定員を増やせません。

施設基準はどうなってる?
・広さ
乳児室:1人の子どもにつき3.3㎡以上
保育室:1人のこどもにつき1.98㎡以上

・職員配置
0歳児は児童3人につき1人
1、2歳児は児童6人につき1人
3歳児は20人につき1人
4、5歳児は30人につき1人

安全な保育ができる環境を整えるために、1人あたりの広さ基準があり、職員配置も幼稚園よりも細かな基準が定められているのです。これが大きな課題の一つでもあります。

仮に9月入学になって、本来3月で退所する年長児が8月まで在籍すると、保育人数が減らないまま新年度4月を迎えるので、広さや人員配置基準からみて新規入所人数が限られてきます。

通常生後2か月から受け入れ可能とされますが、移行にあたって5か月ほど後ろ倒しにせざるを得ない可能性も考えられます。

9月入学は待機児童問題を解消できる?

小学校入学時期だけではなく、保育所入所時期まで影響が出るとあって、共働き世帯の方にとってはさらに切実な問題になってきます。保育所に入所できなければ、働ける環境が整いませんよね。

待機児童問題は学童保育にも!

保育所と共に学童保育の待機児童の増加も懸念されます。1年で移行すると、その年に保育所の待機児童が増えても翌年には解消、学童保育は進級で利用が減るので、待機児童増加は一時的とされます。

しかし、5年間の段階移行の場合は、学童保育は移行期間中は待機児童が多い状態が続くとされ、その分共働き・ひとり親家庭など保護者の働く環境が厳しくなると考えられるのです。

学校が再開されて、新しい生活様式のもと徐々に日常生活が戻りつつあります。授業時間を増やしたり、履修項目を検討するなどして学習の遅れを取り戻す取り組みは始まっています。

今年度や来年度での導入は見送られましたが、今後また検討は続けられていくことでしょう。できるだけ負担の少ない形で、スムーズな移行ができるような話し合いが進むことを願います。

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